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第17話 その女演者につき

第17話 その女演者につき

静けさの中、人の息づかいとペンの走る音だけが耳に響いていた。
ペンを何本かダメにし、白紙のスクロールと秘薬が残り少なくなってきたころ。

「書きあがったぁー」

女の声がヘイブン魔法学校に響いた。書士の鋭い視線が女に突き刺さる。

「あ、ごめんなさい」
「シィッー」

書士の静かな叱責に肩をすくませていたら、ふいに後ろに気配を感じた。
他の書士の一人が女に話しかけてきてだな、

「かのかさん、書写の勉強は十分なようですね。あなたがこの奥の深い学問に興味を持ってくれてうれしいわ。何より、あなたは字もきれいだしね」
「あ、ありがとうございます」

女、かのかはヘイブン魔法学校書写課程卒業のあかしとして、神聖スペルブックを拝領したんだな。かのかは本を手に魔法学校を後にすると、

「解放されたぁー」

と大声で叫びやがった。魔法学校のマスターが片方の眉を吊り上げたのはここだけの話だ。

「よ、かのか」
「兄き」

鉄の鎧に身を包んだ騎士崩れか、冒険者風のおっさんがかのかを出迎えていた。珍しく酔っぱらってないこのおっさん、シーバスはだいぶ年の離れた妹と右腕を突き合わせた。

「ちゃんと大人しく勉強したか? 図書館で大声出したりしてないか?」
「もう、大丈夫だから。ほら見てスペルブックだよ。今日から私も魔法使いだ」
「そうかそうか、よかったな。ほら、受け取れ。俺からの卒業祝いだ」

シーバスはかのかに向かってバッグをどさっと渡すと、かのかはびっくりしたように、

「わあ、かわいい熊帽子じゃない。それに鎧一式まで入ってる」
「魔法使いやるなら、秘薬低減装備は必要だからな。それっぽいのを買って来たぞ」
「ありがとー、兄きっ」

こーして、かのかの修行が開始したんだな。
かのかは鎧を身にまとい、ギター・・・じゃなくてリュートを取り出すと、

「聞いて、私の演奏!」
「お、おう」

リュートをかき鳴らしながら魔法を乱射した。唯一の観客は、

「こりゃあ」

立派な不調和メイジになるなと、シーバスはそっと耳をふさいだ。



こうして、シーバスの妹かのかが、バードメイジとして誕生したんだな。
どんなことになるかはわからないが、まあ、頑張るだろう。
今はただ、

「見守ろう」

シーバスは早々に耳栓を購入した。



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プロフィール

Author:シーバス・リーガル
ブリタニアで騎士を目指している酔っ払い。
まだまだ騎士見習いにも程遠いが、どうなるかなー。

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